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  • 誉田屋源兵衛さんの言葉、下地があるから「型」を破れる、下地がなかったらただの「かたなし」や

    誉田屋源兵衛さんの言葉、下地があるから「型」を破れる、下地がなかったらただの「かたなし」や

    本日は自分の備忘録も兼ねて。

    先週の日本経済新聞の夕刊の“人間発見”の読み物はすごかったね。5日間取り上げられていた人は「誉田屋源兵衛 十代目 山口源兵衛」(誉田=こんだ、源兵衛=げんべえ)という人です。京都の老舗で呉服の帯などを製造して販売している人ですね。

    自分は今までの人生経験で京都の老舗の旦那衆はキライなんだな。何を考えているのか本心を言わないし、粋だろうけれど、よくわかない人が多いので。

    この誉田さんもそうなのだろうけれど、その迫力というか生き様がすごかったね。最終の金曜日の話しはこんな感じでした。題して“計りて作らず”です。

    素晴らしいもん作る若手はいると思う。作家志向の子を誉田屋がサポートできたらええと思うてる。今の若手はええもん作っても「高すぎる」とか言われてコストダウンを迫られる。商売に振り回されて自由に作れへんのや

    ただ、下地を作らんで作家になる若手も多い。下地があるから「型」を破れるんや。俺は10年ぐらいかけて下地ができたから「型破り」なことができる。けど、下地がなかったらただの「かたなし」や。俺を破天荒な「婆娑羅(ばさら)」や「傾(かぶ)き者」になぞらえる人もいるけど、そんな単純なものやない。

    (中略)

    俺には心底満足できる帯がまだ1本もないんや。前に作った帯を見て、この色、間違うたなと思うこともある。1本でええから本当に満足できる帯を作って、死んだらそれを巻いてほしい思うてる。

    俺はまだ振り切れてへんのや。どっかでコスト意識とかでブレーキ踏ん出る。本気で振り切ったろう思うたんは、実はごく最近なんや。ようやく、「計りて作らず」の境地に入り始めたのかもしれん。

    「計りて作らず」とは、コストを考えずに自由に作るということですね、単純に言えばね。だけど、誉田屋さんとは一緒縁はないでしょうが、豪快なおっさんだね。

    そして、その豪快なおっさんの記事の横にあったのが、「追想録」での“建築家 磯崎 新”さんの記事。これもよい言葉なので備忘録として。

    「還暦を迎えたのを機に、3つのものを求めないと決めた」

    磯崎新さんが筆者に話してくれたのは2009年、77歳のときだ。名誉、地位、財産。「晩年になってそれらに惑わせられ、創造性を失い守勢にまわる人間をいやというほど見てきたのでね」

    自分も見習いたいね、素直にね。

    これらの人物と違って、3月の「私の履歴書」のJR九州の唐池恒二さんの話しは面白くなかったね。やっぱりサラリーマン社長はだめだね。話しが説教臭いんだな。

    この人の話しを読んでいて、最近読んだ大前研一さんの「第4の波」の中の一文を思い出したのです。“リタイア後に金が余っている日本人”という章の一文です。

    そのことに最後に気がついて旅行して使おうと思っても、もう海外に出かける元気はない。したがって、JR九州「ななつ星 in 九州」などのクルーズトレインに乗り、3泊4日で1人100万円以上、夫婦2人なら200万円以上も払っているんです。降りる時に「非常によかった」「感動した」と言って次回の予約をする人が10人1人いるそうですが、博多でハイヤーを雇って夫婦で行きたい観光地や温泉宿、レストランを3泊4日で巡っても50万円ほどで済むと思うので、実にもったいない話です。私はこれを“やけくそ消費”と呼んでいます

    たしかに、“やけくそ消費”とは言い得て妙です。大前節、炸裂です。

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  • ジャン=リュック・ゴダール監督追悼で映画館で「勝手にしやがれ」を観た、脚本というより映像演出の斬新さが秀逸だな

    ジャン=リュック・ゴダール監督追悼で映画館で「勝手にしやがれ」を観た、脚本というより映像演出の斬新さが秀逸だな

    本日も昔の名画のお話しです。先日、フランスのジャン=リュック・ゴダール監督がお亡くなりになられました。自分の映画史の中ではそんなに思い入れのある監督ではなかったのですが、「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」はDVDで鑑賞していたと思ったのです。

    映画館の大スクリーンで観る「勝手にしやがれ」はどんなものかなと興味本位で、渋谷のBunkamuraル・シネマに足を向けたのでした。

    “ジャン=リュック・ゴダール監督追悼上映”に参戦です。

    9月13日に91年の生涯を閉じたジャン=リュック・ゴダール監督を追悼し、ゴダール監督の長編デビュー作『勝手にしやがれ』と、ヌーヴェル・ヴァーグの最高到達点と評される代表作『気狂いピエロ』の2作品を追悼上映いたします。

    ジャン=リュック・ゴダールは1930年12月3日パリ生まれ。「カイエ・デュ・シネマ」誌などで映画評や映画論を執筆したのち、長編監督デビュー作となった『勝手にしやがれ』(60)がベルリン国際映画祭監督賞及びジャン・ヴィゴ賞を獲得して以来、フランソワ・トリュフォー、エリック・ロメール、クロード・シャブロル、ジャック・リヴェットらとともにヌーヴェル・ヴァーグの中心人物として、また映画史において最も重要で影響力のある映画監督のひとりとして知られています。

    2022年9月13日、スイスの自宅で91歳の生涯を閉じたゴダール監督に敬意を表し、追悼上映を行います。

    鑑賞した後の感想です。実はこの名画「勝手にしやがれ」を観たことがないことが分かったのでした。アチャーです。

    月並みな表現ですが、この映画は脚本というよりジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグの魅力とジャン・リュック・ゴダールの斬新な演出とカメラワークが最大の魅力なのかな。「気狂いピエロ」ほど難解な話しの筋ではないな。

    当時のパリの雰囲気が映像に爆発しています。当時、この映画を観たらその斬新な演出にはまっただろうなという映画ですね。だけど、ジーン・セバーグはオードリー・ヘップバーンに容姿やそのコケティッシュさ雰囲気も含め、よく似ていますね。そう素直に思ったのでした。

    だけど、当時のパリでもジャン=ポール・ベルモンドの演じた役の日常はやっぱりありえないな。まあ、映画だと言われればそうなのですが。気狂いピエロといい、やっぱり最後は破滅的になるのね。

    話は脇道にそれますが、沢田研二の「勝手にしやがれ」はこの邦題が由来なのかな。

  • 追悼 エンリオ・モリコーネさん91歳で死去。20世紀後半の一番偉大な作曲家を失くしました

    追悼 エンリオ・モリコーネさん91歳で死去。20世紀後半の一番偉大な作曲家を失くしました

    現在の音楽家で一番偉大と自分は思っているエンリオ・モリコーネ(Ennio Morricone)先生が新型コロナウィルスで自粛が求められているこの時に、2020年7月6日にご逝去されたという報道を自分は7月7日の日本経済新聞の訃報欄で知ったのでした。

    E・モリコーネさん死去 映画音楽の巨匠、91歳

    イタリアの作曲家で、「ニュー・シネマ・パラダイス」など数々の映画音楽を担当した巨匠、エンリオ・モリコーネさんが7月6日、ローマの病院で死去した。91歳だった

    大腿(だいたい)骨を骨折し入院、手術を受けた後、容体が悪化したという。イタリアのメディアが報じた。

    名門サンタ・チェチーリア音楽院で学び、1950年代から活躍、400本以上の映画音楽を手掛けた。

    マカロニウエスタンの代表作「荒野の用心棒」をはじめ、幼なじみでもあるセルジオ・レオーネ監督の多くの作品で音楽を担当。

    口笛によるメロディーなど、叙情的で優雅でありながら強い印象を与える音楽が特徴として知られていた。

    衝撃を受けました。

    このような報道を受けヨーヨーマ(Yo-Yo Ma)のがTwitterでエンリオモリコーネの追悼のニューシネマパラダイスから愛のテーマを演奏した動画と、つぶやいた言葉です。

    私はエンリオ・モリコーネが情熱(energy)・空間(space)・時空(time)としての音楽で描いてきた手法を決して忘れないでしょう。

    それはおそらく自分が今まで聞いてきた最も簡潔で正確な表現方法だったのです。

    我々は本当に彼がいなくなって寂しい思いをするでしょう。

    ヨーヨーマとモリコーネは「ヨーヨー・マ・プレイズ・モリコーネ 」という作品を一緒につくっていますね。これは間違いなく名盤です。

    エンリオ・モリコーネは小泉純一郎さんが首相だった時、一番好きな音楽家は誰と聞かれて、もちろん、モリコーネと答えた記憶が鮮明にあるんだな。

    おそらく20世紀後半の一番偉大な作曲家だったと自分は確信しています。

    映画音楽の中でどれが一番好きかと問われれば、自分はモリコーネの「ニュー・シネマ・パラダイス」か、スタンリー・マイヤーズ作曲による映画『ディア・ハンター』のテーマ曲の「カヴァティーナ」の2つのうちのいずれか一つになると思います。

    だけど、クリント・イーストウッドとセルジオ・レオーネが組んで作ったマカロニウエスタンのモリコーネの音楽は斬新で奇抜で才気あふれるものです。

    残念ながら、本場のアメリカのウエスタン映画で音楽が浮かぶ映画はほとんどありません。

    本当に偉大な人物を亡くしました。ご冥福をお祈りします。