2020年7月3日の日本経済新聞の2面に掲載されていた“真相深層”という特集記事には驚いたものです。
アメリカの航空会社も例にもれず、新型コロナウイルスの影響で経営が非常に厳しく、資金繰りも綱渡りの状態が続いています。
余談を許さない状況です。
そんな状況ですが、銀行団にとって担保価値のあるものが、マイルなのです。まさにマイルが命綱の状況らしいのです。
この記事は大変興味深かったです。ウォール街の怖さを見ました。
記事のタイトルは「米航空大手、マイルが命綱」です。
経営難に直面する米航空大手が、顧客に対して付与した「マイレージ」を担保に資金調達に乗り出す。
ポイント事業は大手3社だけで6兆円の価値があるとされる。
本来は「負債」に当たるマイレージを担保にお金を借りる妙手で、価値の目減りなどリスクもつきまとう。
収益の柱に
ユナイテッド航空は6月、米ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどの銀行団と、50億ドル(約5400億円)の融資枠新設で合意した。
新型コロナウイルスで壊滅的な打撃を受けるなか、運転資金を確保する。
今回担保として差し出したのは定番の航空機やエンジンではない。マイレージ事業だ。
「3月以降のコロナ禍での資金繰り策として、突如考え始めたものだ」。米銀大手の関係者はこう明かす。
ユナイテッドのマイレージプログラムは1億人の会員を抱え、110超の提携先を持つ。2019年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は18億ドルと、ユナイテッド全体の3割弱を稼いだ。
今や航空会社の収益を支えるドル箱だ。
ユナイテッドだけではない。アメリカン航空は約48億ドルの政府融資を求め米財務省と交渉しているが、マイレージ事業を担保とする方向で調整している。
米中堅証券のスティーフル・フィナンシャルは4月、アメリカン、ユナイテッド、デルタ航空の3社のマイレージ事業の評価額は536億ドルに上ると評価した。
「我々にはありえない発想だ」。日本のメガバンク幹部は驚きを隠さない。
日本では会社が清算してもなお価値が残る機体関連や空港のゲート使用権などを担保として認定するのが慣例だ
そもそもマイレージは航空会社にとって負債に当たる。
(中略)
マイル発行を増やせば航空会社は現金収入を得られるが、債務も増える。
(中略)
しかし銀行団はそうは見ていないようだ。
「米銀は航空会社がチャプター11(米連邦破産法11条)を申請することを前提に動いている」と関係者は明かす。
米国のチャプター11は精算とは異なり、事業を継続しながら再建を目指す。
飛行機が飛び続ける限り、その担保価値は保たれるという発想だ。
入念な安全網も敷いている。ユナイテッドの場合、融資枠50億ドルの担保になったマイレージ事業の評価額は約220億ドルで、多少毀損しても問題はない。
再建果たせば、富裕層を中心に優良顧客を多数抱えるマイレージ事業は「データ資産」としての価値を増す。
(中略)
前例なき「マイル担保」は航空会社の資金繰りの新たな処方箋か、危うい錬金術か。その解はまだ見えていない。
この記事には驚きましたが、確かに航空会社のマイレージ会員は航空会社提携のクレジットカードを保有したりしており、富裕層が多いイメージです。実際、確かにそのとおりでしょう。
日本のANAとJALのマイレージ顧客を見ても、その顧客層は確かに富裕層が多そうです。
そして、現在のANAの株式市場での時価総額は約8,500億円、JALに至っては6,600億円程度なのです。
もし、アメリカの銀行団の判断が正しいとすると、ANAとJALのマイレージ顧客としての無形資産を考慮に入れると、極端に格安と判断できます。
日本の銀行団の考え方が間違っているのか、アメリカの方がアグレッシブすぎるのか、のどちらかですね。