今日は福岡離陸前の福岡空港で本当に最後に食べた博多ラーメンのことを書こうと思ったのですが、沢木耕太郎さんの非常によい文章を読んだので、先にそれを紹介したいと思います。
毎年、12月24日の深夜はJ-WAVEであの沢木耕太郎さんの「沢木耕太郎~MIDNIGHT EXPRESS 天涯へ~」という番組が3時間ほどあるのです。
自分的な楽しみは、丁度、年末年始に海外に向かう成田行きのバスの中でこの録音した番組を聴きながら、行く年を惜しみながら聞くのが楽しみなのです。
そんな番組ですが、今年も同様に番組オンエアーの数日前から沢木さんからのeメール日記というものが届くのです。
今年の4回目(12月21日)はこんな文章があったのです。今年、山形に行かれた時の逸話だそうです。
幾筋か通りを歩き、居酒屋や食堂を物色したが、これと思える店がなかなか見つからない。しかし、私はこういう状況が決して嫌いではないのだ。
夜、まったく知らない街に着き、手頃な飲み屋や食堂を探して通りをうろつく。その結果、おいしく食べたり気分よく飲むことのできる店が見つかれば「ラッキー!」だし、失敗したとしても「残念!」と思うだけだ。
ただ、私は、こういう店の探し方においてはかなり経験を積んでおり、勝率はかなり高い。
そのとき、通りの角に立っていた若い男性に声を掛けられた。
「キャバクラをお探しですか」
実は、それを待っていたようなところもあったのだ。
「いや、今日はキャバクラはいいんだけど、この近くにおいしい酒と肴にありつける店はないかな」
私が訊き返すと、若者は最初はちょっとびっくりしたようだったが、次の瞬間には真剣に考えるような様子を見せ、こう言った。
「この次の角を曲がると、左側の建物に階段があって、その二階にサカナイチという店があります。」
「サカナイチ? 魚に市と書くの?」
「いえ、酒に菜の花の菜に一、二の一です」
「酒菜一か」
「ええ、ちょっとわかりにくいんですけど、お客さんには、そこがいいんじゃないでしょうか。日本酒が揃っています」
「ありがとう。行ってみるよ」
「お気をつけて」
実に気持のよいやり取りだった。
そして、私は若者の言葉を疑うことなくその店に行くと、看板になる直前まで、おいしい山形の料理を食べ、気分よく山形の酒を飲むことができたのだった。
自分の経験ではこんな形で見知らぬ土地でお店を紹介してもらったことはないのですが、これもありですね。街で呼び込みをしている人は地元の人でしょうから、こんな形で相談すると金髪の若い子も親身になってお店を紹介してくれると思った次第です。
さすがに旅の達人は違います。恐れ入りました。“深夜特急の男”、恐るべし