自分の蔵書の中で一番読みたかった本、アイン・ランドの「肩をすくめるアトラス」を毎日1時間強の読書時間確保で約2ケ月かけて読み切った。大変充実した2ケ月だった。
この本は読んでいない人にはチンプンカンプンでしょうが、一言で言えばこの文言に付きますね。小説の中でも全編にわたって出てくるフレーズ、「ジョン・ゴールトは誰だろう?」という意味不明の言葉に尽きるんだな。
自分の「肩をすくめるアトラス」は2004年10月6日刊の第1刷版です。全1270ページの2段組の文字びっしりです。弁当箱を2つ重ねたより厚い本です。
訳者(脇坂あゆみ)あとがきにも書かれているように、
ワシントン・ポストのウィリアム・パワーズ記者は、1996年の特集記事のなかで、「彼女の思想は本質的に我々の思想なのであり、われわれ現代アメリカ人の行きかたを形づくってきた思想であるともいえる」と述べている。
むろんこれがアメリカの主流だといえば激しく異をとなえるアメリカ人のほうが多いはずだ。とりわけ宗教観についてのランドの味方はいまも異端中の異端であり、敬虔なアメリカ人の多くがランドを敬遠する一因ともなっている。
それでも徹底した個人主義と能力主義、小さな政府志向などはアメリカ的前提の核であることにかわりはない。
ランドの思想はその源泉ではなかったにしても、アメリカを見つめる外国人にひとつの切り口を提供してくれる。
では何故、日本では政治家や行政機関の要人や大学教授(いわゆる政府の諮問機関などに入っている学者)などの人たちが、本書を愛読書なとど取り上げたことは自分は一度も見たことはないのです。
「肩をすくめるアトラス」では能力のある経営者などを徹底的に締め上げ方をいわゆる“たかりや”として糾弾している書だからでしよう。大統領さえも“たかりや”です。小説はその対比の対立間で話しが進んでいくのです。
そうとすれば、日本の政治家などはランドいわく、全員たかりやです。そんな危険な思想の「肩をすくめるアトラス」を誰も愛読書などど公言できたものではありません。そもそも読んだことがない人も99%でしょう。
アマゾンの紹介文です。
アメリカの「保守の女神」と言われるアイン・ランドの最高傑作。元連邦準備制度理事長のアラン・グリーンスパンら当時の若者に大きな影響を与え、米国議会図書館の調査で「聖書に次いでアメリカ人が最も大きな影響を受けた本」とされた。
あらすじはこんな感じです。
タッガート大陸横断鉄道の副社長ダグニーは、政治的駆け引きに明け暮れる社長で兄のジムと対立しながら鉄道を経営している。成長著しいコロラドの路線の再建のため、彼女は起業家のリアーデンが十年をかけて開発した画期的なメタルを採用し、新線を完成させる。だが企業活動を阻む規制が強まるなか、実業家たちが次々と姿を消していく。
だけど、最後の最後の方でのジョン・ゴールトの格調高いラジオ演説の長さにはまいったな。あまりにも高尚で比喩が多すぎて自分にはあまり理解できず、文字を追っているだけになりました。だけど、これがアイン・ランドの本当に言いたいことなんだろうな。
究極の個人主義と能力主義を表すリバタリアニズム(個人主義的自由主義)の本質を知りたいなら、本家本元のランドの「肩をすくめるアトラス」を読むしかないと思います。
自分が今までの人生で読んだ中でも強烈な印象の本でした。ベーシックインカムなんでくそくらえぐらいの意見をいう日本の政治家はいないものかな。
小説の中ではアイン・ランドはダクニー・タッカードとジョン・ゴールドの2人を通じて自分を投影しているのかな。
次はランドの「水源」の前に、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」に挑みます。
(追記)
謎めいた言葉、「ジョン・ゴールトは誰だろう?」。
それはアイン・ランド本人なのかな、世界を救う救世主として。