自分が尊敬する人に橘玲氏がいらっしゃいます。そして、自分が毎週定期購読している日経ヴェリタスに月に1回程度、“橘玲の世界は損得勘定”というコラムを連載されているのです。
2021年3月21日号にその橘玲氏がおもしろいコラムを書いているのです。
今週のタイトルは「金持ち賃貸 貧乏持ち家」です。
いまだに多くのひとが、「老後に備えて早めにマイホームを買わなければならない」と思っている。だがこの常識は正しいのだろうか。
ここで、「持ち家が得か、賃貸が得か」という神学論争を始めるつもりはない。マイホームの購入というのは、住宅ローンによってレバレッジをかけて不動産市場に投資することで、ファイナンス理論的には、株式投資の信用取引と同じだ。投資戦略でリスク・リターン比にちがいはあるだろうが、どちらが得かは結果論でしかない。
そこで視点を変えて、「持ち家なのに貧困」という現象を考えてみたい。
金融広報中央委員会が「家計の金融行動に関する世論調査」を毎年公表しているが、2019年の「2人以上世帯」では、「持ち家」と回答したなかに「金融資産非保有」が21%もいる。持ち家が5軒並んでいたら、そのうちの1軒は銀行口座に残高がほとんどない。
さらに驚くのは、金融資産ごとの持ち家率を計算してみると、「金融資産非保有」と回答した世帯のうちじつに69%が「持ち家」であることだ。
「貯金ゼロ」の7割が持ち家というこの奇妙な数字はなにを意味しているのだろうか。ここからは私の推測だが、貯金をはたいてマイホームを購入したケースもあるかもしれないが、その多くは貧困によって実家から出られないまま高齢になり、結果として「持ち家」の世帯主になったのではないだろうか。
(中略)
経済的に余裕のある世帯が、歳をとってからも持ち家にこだわり、ヘルパーに頼りながら買い物やゴミ出しをする理由はない。そう考えた富裕層が、自宅を売却して高級サ高住(サービス付高齢者住宅)や高齢有料老人ホームに移れば、統計上は賃貸になる。
「人生100年時代」では、富裕層が「賃貸」になる一方で、乏しい年金をやりくりしなければならない貧困層は自宅から出られず「持ち家」のままかもしれない。
ここからわかるのは、重要なのは「持ち家か賃貸か」ではなく、時価評価した純資産の額だということだ。またもや身もふたもない結論になっていまうが、最後は「現金(キャッシュ)」がものをいうのだ。
久しぶりに橘先生の切れ味するどいエッセイです。確かにそのとおり、時価評価した純資産の額なのです。
ちなみに自分は過去、賃貸と持ち家を交互に回しながらこれまでやってきました。不動産市況が悪い時に購入して、市況がよくなれば売却して賃貸に住むということを繰り返してきました。
だけど、自分の体験上の真理は、ファミリー向けの分譲マンションを賃貸に出した場合の利回りはかなり悪いです。単身者向けのワンルームをいくつか持って利回り6-9%程度で回して、自分は家族でファミリー向け賃貸に入った方がサヤを抜けると思います。
一種のアービトラージですが。何故、ファミリー向けの分譲マンションの利回りが悪いのかは、おそらくそれは一言で言うと、“マイホームという夢”が分譲販売価格に上乗せされているからだと思います。
だけど、橘玲氏の「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」は、今でもどんな投資本よりも読む価値のある必本であると確信しています。
間違いないよ。