2021年のGWにヴィスコンティの超大作「ルートヴィヒ」を見た。すごいものを観たの一言

2021年のGWに2日間かけて、 ルキーノ・ヴィスコンティの超大作「ルートヴィヒ」(デジタル完全修復版)を自宅で観た。何せ、3 時間 57 分の大作なのです。

5年間、本棚に置いて、そろそろ熟成が進んだと判断して、意を決して観たのです。

観た後の感想。一言、「すごいものを観た」。この映画は、ヘルムート・バーガーとロミー・シュナイダー抜きには語れないですね。これをキャスティングした、ヴィスコンティ、やはりすごい洞察力です。こんな映画を、今では製作できる人も監督もいないなと断言できます。

物語はこんな感じです。

巨匠ヴィスコンティが悲劇の大帝ルートヴィヒ2世を描ききる

19世紀、18歳でバイエルン国王に即位したルートヴィヒ2世は音楽家ワーグナーに傾倒し、国の予算を危険にさらすほどの援助を施す。
従姉のエリーザベト皇后に恋い焦がれるもその恋は叶わず、彼女の妹ゾフィーと婚約するもこれを破棄。
さらに戦争を嫌った彼は前線に弟のオットーを送り出すもののその弟は帰国後、精神を病んでしまう。
数々の苦渋に苛まれた彼はいよいよ厭世的になり、美男の従僕たちとの退廃的な暮らしに耽溺。
国王の役目を果たさないことに業を煮やした官僚たちは、彼から王位を引きはがそうと画策し始める……。

俗にこのルートヴィヒ2世、神話に魅了され長じては建築と音楽に破滅的浪費を繰り返した「狂王」の異名で知られるわけですが、後に残したものが物語るのが、一般の人には見えていない世界があったいうことでしょう。ノイシュヴァンシュタイン城やバイロイト祝祭劇場を残しただけで、現在のドイツの最大の遺産になっているのですから。

まさに天才と狂人は紙一重ですね。

今まで自分が観た映画のトップ3はこの3つです。

  • ゴットファーザー(1)
  • ディア・ハンター
  • ニューシネマ・パラダイス

だけど監督では、ルキーノ・ヴィスコンティがダントツですね。そして、ヴィスコンティの作品のベスト3は以下の3つだと断言できます。

  • 山猫
  • ルートヴィヒ
  • ベニスに死す

ヴィスコンティの映画なかで、徹底してひとりの人物に焦点を絞ってその生涯を追ったのは、この「ルートヴィヒ」だけなのです。それほど、ヴィスコンティにとっては魅力的な人物だったのだと想像できます。

DVDに内包されていた中条省平さんの言葉です。

「山猫」には、鮮やかな色彩があり、南国シチリアの陽光に輝く空気があり、戦争や舞踏会などスペクタルがあり、悠揚として流麗なカメラの動きがあります。見る者を否応なく物語とイメージとアクションの興奮に巻き込んでいくような映画の快楽があるのです。

これに対して、「ルートヴィヒ」を満たしているのは、陰鬱に沈む黄昏と暗闇の世界であり、冷たい冬のドイツの雪と霧と雨であり、また、狂気と死にむかって緩慢に進行する主人公の精神と肉体のデカダンスであり、その様相をじっくりと凝視する胸苦しいまでの画面の重さなのです。

この映画の中ではワーグナーも重要な役割を担っているのです。なんたって、美と芸術に傾倒するルートヴィヒ2世ですから。そのワーグナー楽劇「トリスタンとイゾルデ」のずいぶん昔の記事ですが、作曲家の三枝成彰さんの言葉です。

実演と心から感動したのは80年代初め、ワーグナー自身が建てた独バイロイト祝祭劇場でみたジャン・ピエール・ポネル演出、ダニエル・バレンボイム指揮の舞台。第1幕の後の休憩で今は亡き映画監督の友人、相米慎二と二人して「参ったな」と言ったきり、口がきけない。2度目の休憩も同じ。すごい体験だった

2021年のGWは、恐るべしルキーノ・ヴィスコンティの「ルートヴィヒ」体験をしたのでした。

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