「お葬式」を観て伊丹十三の偉大さを再確認、結局、日本映画は黒澤と伊丹だけじゃないのかな

数日前に日本橋のTOHOシネマズで絶賛開催されている“午前十時の映画祭13”で上映されている伊丹十三の衝撃の監督デビュー作「お葬式」を観に行ったのです。

もちろん公開当時、劇場で観たのですが。この「お葬式」が公開されたのが1984年です。自宅にもDVDを所有していますが、約40年ぶりに観た。何故か、テレビで伊丹十三の映画が放映されることは全くないね。

観ての感想。やっぱり伊丹十三、天才だねと素直に思った。結局、日本映画界で輝ける監督は黒澤明と伊丹十三しかいないね。(小津ファンから相当怒られそうだな)

伊丹十三が亡くなった(自殺)のが1997年12月20日。この「お葬式」から亡くなるまでの約13年間に10本撮ったんだ。「タンポポ」も「マルサの女」もね。(自分が思うにこの当初の3作がセルジオ・レオーネの「ドル箱3部作」と言われるのと同じで、伊丹十三の「ドル箱3部作」なんだろうね、その価値は十分あり)

伊丹十三亡き後、日本映画はまったく進歩していないというか、題材がおもしろくないね。ちまちましたどうでもいい恋愛映画ばっかり。これじゃ、世界の映画から置いていかれるわけだな。

自分なりにこの「お葬式」(1984年公開)が当時の世界の名作映画の中でどんな時間軸で現れたか整理します。

  • ゴットファザー 1972年
  • ディア・ハンター 1978年
  • ニューシネマパラダイス 1989年
  • パルプ・フィクション 1994年

ディア・ハンターとニューシネマパラダイスの丁度中間なんだね。

今回、「お葬式」を改めて観て、思ったことです。

やっぱり伊丹監督の映画における商業性と芸術性のバランスが最高にうまいね。商業性では2時間にきっちりと納める力量はりっぱ。脚本と監督を彼が兼ねているわけだけど、脚本も丁寧だね。そりゃあ、文筆家でもあったからね。

あと配役のうまさにはうなったね。もちろん彼の奥さんの宮本信子の魅力を引き出した手腕、山崎努くんを主演にした冴え、特にあの財津一郎は最高だね。(自分はいつもフランキー堺と間違えてしまえのですが)

特に脇役はすごいね、これもう脇役のレベルじゃないよ、特にこの3人

  • 大滝秀治 (親戚)
  • 笠智衆  (坊主)
  • 江戸家猫八(葬儀社)

大滝秀治の枕の位置に固執するボケ、笠智衆の枯れた坊主態度(あの雰囲気は出そうと思って出せるものではないよ)、江戸家猫八の葬儀社のあのうさんくささ、たまりません。

笠智衆のロールスロイスで来たシーンは伊丹十三のウィットここにあり。

あと高瀬春奈のあのムチッと感、40年ぶりに見てもいいね。尾藤イサオさん、テレビで見かけないけどどうしているのかな。あの宮本信子と尾藤イサオの「東京だョおっ母さん」のシーン、ジーンとくるね。

小ネタをもう一つ。エンディングロールを見ていて気づいたのでした、電報配達人に井上陽水の名前が。驚きました。

最後は宮本信子、財津一郎が腕に黒の喪章を巻くときにかけた言葉、「よおっ、葬儀委員長」

本当に楽しい2時間でした。

伊丹十三が生きていたら、タランティーノなんかに負けなかったのにね。残念至極。

一昨日は東京は桜満開というのに、雨模様です。こんな日は映画に限るね。 今回の映画館は本当にシブいよ。目黒駅前にある単館の映画館の「目黒...





スポンサーリンク
レクタングル(大)広告